未病のおはなしⅢ 第3話 腎

「寒」の侵入を防ぎ温かくのんびり過ごす

短い秋が過ぎ、風を通さない上着や温かいお鍋が恋しい気候になりました。秋の「燥(乾燥)」に替わって、冬は「寒(寒冷)」が外因の中心になります。今から3カ月あまりは、寒さを防ぎながら、どちらかというと、静かに過ごす閉蔵の時です。次の季節に向けて、栄養やエネルギーをためておく季節ということもできます。自律神経も交感神経より副交感神経が優位に働く方が正常ですので、驚いたり、ドキドキしたりは避けて、のんびりしていましょう。
体の中で「寒」に一番に痛めつけられるのは「腎」です。現代的に「腎」といえば、「腎臓」「副腎」が思い浮かびますが、東洋医学の「腎」には膀胱や生殖器などなど下腹部にある臓器だけでなく、骨や耳、肺や毛髪とも関連しています。「腎は精を蔵し、発育と生殖を主る」とあるように、「腎」では、生命エネルギーである「気(精)」を蓄えています。この気には、両親から受け継いだ先天の気と食事や呼吸から作られる後天の気とがあります。先天の気は成長や発育・生殖に使われて次第に減っていくのですが、その後、きちんとした食事や深い呼吸を心がけていると、後天の気がそれを補ってくれます。
「腎」が衰えることを「腎虚」といい、高齢になると多かれ少なかれ腎虚のいろいろな症状が現れます。頻尿や残尿感、前立腺肥大、骨粗鬆症、耳鳴りや難聴、風邪・肺炎・抜け毛・白髪など……ですから頻尿や夜間尿に使われる腎虚の方剤「八味地黄丸」で、耳鳴りが改善されることもあります。
「寒」の侵入を防ぐには、まず体を冷やさないこと。外出の際には、マフラー・手袋・レッグウォーマーなどで、首・手首・足首を包んでください(おへそや背中を出すのは、もってのほかです)。また野菜とたんぱく質をたっぷり取ることのできるお鍋をわいわい食べて熱燗一献。お風呂にはゆったりとつかり、暖かいお布団にくるまって、早めに寝ることにしましょう。

監修:キリン堂 未病医療サポート室 杉本幸枝(薬剤師)