未病のおはなしⅡ 番外編2

「からだの声を聴いて食べる」の落とし穴

このシリーズでは、それぞれの味がからだに及ぼす影響についてお話してきました。今回は、私たちのからだの側から「五味」を考えてみましょう。東洋医学の五味は「酸・苦・甘・辛・鹹」ですが、日本食の基本的な五味は「辛」に代わって「旨み(だしの味)」が加わります。
この中で一般的にいつもおいしく感じるのは、「甘み・鹹み・旨み」です。最も効率的にからだを動かすエネルギー源となるのは「甘み」であり、鹹みや旨みはからだを構成するミネラルやアミノ酸をそれぞれ含むために、からだ側から求めているのでしょう。一部の苦手な人を除いて、最も好まれる「甘み」は、脳内に快感物質を生み出します。疲れた時に甘いものを食べたくなるのは、経験からこの快感を知ってしまっているからです。
一方、ストレスによって苦みの感受性が弱まり、仕事の後のビールは特にひと口目をおいしく感じます。飲むほどにストレスがほぐれて、苦みを強く感じるようになります。また、肉体労働や運動の後には、汗から流れ出た塩分補給のために塩辛いものを食べたくなったり、酸みの感受性が低下してレモンのように酸っぱい物をおいしく食べることができたりします。
このように本来は、からだの声を聴いて本能的に食べていると養生になるはずですが、現代の何でも食べたい時に食べられる環境では抑制も肝心になります。特に注意が必要なのは、甘いものと脂肪です。脂肪自体に味はありませんが、甘みや旨みをよりおいしくするとともに柔らかい食感が私たちをとりこにします。最近、カロリー制限をすることで活性化される健康長寿の遺伝子(サーチュイン遺伝子)が話題になっています。私たちは昔から「腹八分目」という大事な教えを知っているはず。からだの欲求には、甘えることなく辛口で応えましょう。

監修:キリン堂 未病医療サポート室 杉本幸枝(薬剤師)